人間万事塞翁が馬

主に観劇の感想を、言いたいことだけ。

夜は短し歩けよ乙女

こんにちは。今回はミュージカル、?ではない観劇体験について。

 

作品は 夜は短し歩けよ乙女

森見登美彦さん原作の人気小説。不毛で不埒で大真面目にふざけた大学生活をおくる青春物語。

前から森見登美彦さんの小説は好きで、ノイタミナ四畳半神話大系をやったとき(大昔ですね)丁度私も大学の一回生とかだったと思われ、めくるめく薔薇色の学生生活に胸躍らせたことでした。(今ここで果たして実際のそれを語ることは時間の無駄である。)

さて、夜は短し〜の小説は、四畳半〜と大体同じテイストで、主に黒髪の乙女にスポットが当たった青春ラブストーリー。同じ話を別の登場人物の視点から書いていくスタイル。これまた大好きな作品です。アニメ映画化も少し前にされていましたが、今度は舞台になるなんて、なんておもちろいのでしょう!

 

主演:先輩は歌舞伎界から中村壱太郎さん、黒髪の乙女は乃木坂の久保史緒里ちゃん。、、どうでもいいけど、漢字変換する時に、中村壱太郎は出てこないのに、久保史緒里は一発で出てくるのなんで?

歌舞伎とアイドルの組み合わせって何事って思いましたが、壱太郎さんその辺のいけてない大学生役ぴったりはまってて、史緒里ちゃんは弘中アナみたいな黒髪の乙女で、ありよりのアリでした。史緒里ちゃん可愛い。でもあれからテレビで乃木坂映ってるとき一生懸命探すんだけど見つからないの。ごめんなさい。

他のキャストは、この界隈に私が疎いので、正直どなた?みたいな方がつらなっているんですが、目立ったビッグネームは竹中直人鈴木砂羽。本物初めてお目にかかったんですが、オーラが違う感じがしました。お衣装がお衣装に見えない。出てきた時から普段もこんなん着てますけど何か?的な佇まい。役者さんてこういうもんかーと勝手に感激しておりました。

ちなみに竹中直人が演じたのは、一切が謎めいた老翁、李白鈴木砂羽は酔っ払うと人の顔を舐め回す歯科衛生士、羽貫さんです。ぴったりです。

 

役者さんがお芝居をしっかりやってたまに歌う、みたいな舞台(どんな舞台だ?)初めてだったんですけど、新鮮ですね。へー!あっさりー!とは思いましたが。でも違和感は無かったです。今回は主演が歌舞伎出身でちょっとテイスト入れてあったりなんかして、見慣れた宝塚も歌舞伎がベースにあるので拍手のタイミングとか割と一緒だったのもあるのかしら?

序盤で黒髪の乙女が、ほろ酔い気分で夜の京都を歩く曲は、世界観がとっても作品に合っていて素敵でした。もう一回聴きたい。いや20回は聴きたい。宝塚ならすぐ楽曲配信してくれるのに。今はYouTubeで上がってるちょっとした動画でしか聴けないのは残念です。

もう一つお気に入りの曲は、学園祭の場面でステージでちょろっと歌っていた謎のヒッピー風コンビの「くだばれへなちょこ弁財天〜」でした。登場は一瞬で、そのフレーズしか歌ってなかったんですが、めちゃくちゃ印象的でした。こんなに場面を端的に表した楽曲がありますかと。舞台上にへなちょこ弁財天が出てきたわけではないですが。カオスな学園祭の、カオス極まるステージ上で意味はよくわからないけど、一定の知性を保ちつつも過激、という絶妙な楽曲でした。あれからたまに口ずさみます。

 

でもね、これは異文化!って感じたことがあって。

お客さん誰も持っていないのです。オペラグラスを、、!

ヅカオタから言わせれば、やる気あんのかって話ですよ。贔屓の顔をアップで見ないなんて、もう何しに行ってるんだって!贔屓の額に浮かぶ汗の粒が観たくてお金払ってるまであるんだぞと。オペラグラス忘れた日には幕間にヨドバシに買いに走る程度には必要なアイテムなのに、皆さんすましてお席で肉眼で観劇なさってました。開演前、首からかけたオペラグラスちょっと隠しちゃったよね。私もそっち派ですって顔で。で、始まったらすっと出したよね。竹中直人ガン見しました。お化粧でおでこがラメラメしてました。

だから皆さん、見逃してましたよね?ちょっと舞台奥だったから。鈴木砂羽が本当にジョッキビール一気飲みしたの。私はオペラグラスなので間近で目撃しましたよ。ジョッキの中の揺れる泡、減っていく黄金色の液体、受け止める唇、動いている喉。お見事。わーっと拍手送りたいところだったのに、みんな肉眼じゃ見えずらいから「あれ今ビール一気飲みっぽいことした、よね?というかあれ本物?」的な空気でまばらな拍手になってました。もったいないー!本物でしたよー!!

 

森見登美彦さんの小説といえば京都題材で、まあ独特な言い回しが特徴です。中学生に読ませたら、さぞかし腹の立つ表現方法ばかり学習することでしょう。なむなむ!

今回の舞台でも、その独特な言葉遣いの数々はしっかり生きていました。

「世の殿方というものは、腐れ外道かど阿呆か、もしくは腐れ外道かつど阿呆のいずれかなのです!」という黒髪の乙女のお姉さんの格言や、「諸君、異論はあるか。あればことごとく却下だ!」という先輩の排他的な決意が大好きですが、立派な舞台俳優さん達が叫んでくれて幸せでした。客席から笑いが起きるシーンは、演技が面白いのと、そもそもの原作の台詞が面白いので半々くらいだったかなと思います。何度も読んだ言葉でも、舞台で言われると新鮮に笑っちゃいました。

 

さて、あと言いたいのは、客層。舞台・原作のファン4割、中村壱太郎(歌舞伎)ファン4割、久保史緒里(乃木坂)ファン3割、なんか1割多いですが、それくらいの割合だったと思われます。つまり、なんというか、カオスだったのです。いえ、皆さん常識と良識を持ち合わせたいい大人ばかりでした。ただ普段違う界隈で暮らしてらっしゃる大人達が、ひと所に集まってしまったので、一体感の無さが凄い。

しかし勉強になりました。なるほど歌舞伎界のプリンスにはそんなグッズが作られているのですね。なるほど乃木坂ファンはそうやって写真を撮るのですね。小説好きそうな青年はそうやって遠慮がちにパンフレットの列に並ぶのですね、と。みんな違ってみんないい。

私はどこに属してると思われたのかな。